2015年
父サウスヴィグラス、母父ラムタラの7歳馬ビンバシェニールは衰え知らずの健脚で根岸S、フェブラリーSと連勝。
同じ血統のテンマジェイジェイはサウジカップで5着。上4頭がシェアードビリーフ、ソロウ、トーナリスト、ワイズダンなので十分善戦したと言えるだろう。
ビンバシェニールも以降も活躍。
高松宮記念ではサローングウェークが2着のハクサンムーンに4馬身差で勝利。スプリントGⅠとは思えない着差である。
彼女はその後もヴィクトリアマイル、スプリンターズS、マイルCSを勝利して短距離界を席巻。クリフジの血、恐るべし。
大阪杯を勝ったのは5歳のトーセンジャコポ(母父ガリレオ)
4歳春にOP馬になった後に七夕賞、小倉記念、オールカマーと3連勝し、前走の京都記念も勝っていた遅咲きの大輪であった。
ちなみに全妹で昨年の桜花賞馬カバルリィウォンも大阪杯に出走しておりこちらは4着(カバルリィウォンはその後エリザベス女王杯を勝利している)
また同じ頃、トーセンスターダムがオーストラリアのランヴェットSを勝利。島川氏はノリに乗っていた。
桜花賞は年明けからの3連勝でトーセンアストロン(母父テイエムオペラオー)が勝利。鞍上田中勝春は流石の名手。
3着はラムタラ産駒で2着も母父ラムタラなので今年のクラシックもラムタラ系から目が離せない。
ウッ!
皐月賞ではカーリングマーリンが勝利。
和田竜二騎手はこれでテイエムオペラオーと皐月賞親子制覇。ファンの脳はこんがり焼けた。
なお馬体重426kgはナリタタイシンと並んで皐月賞馬としては最軽量。
競馬ファン「あへあへあへ……」
去年の2歳女王テンマオルガネットが樫の女王を奪取。
帝王賞はオリーブ冠のラムタラ産駒がワンツー。
オリーブスイングは昨年シルコレ化していただきに織月和佳奈氏の喜びもひとしお。
2歳戦。
全日本2歳優駿はティンムーニャン(父パイロ、母父ラムタラ)
朝日杯はテンマカウンター(父ラムタラ、母父エーピーインディ)
ホープフルSはサマルカンド(父ラムタラ、母父サウスヴィグラス)
がそれぞれ勝利。
こんな名前だがサマルカンドは島川氏の所有馬なのでネット掲示板ではトーセンサマルカンドと呼ばれる事もある。
父パイロ、母父ラムタラのカメハメハスピーチが東海S、フェブラリーSと連勝。

以降のレースも完全連対。
鞍上の柴田大知騎手も花の12期生に相応しい名騎乗。
カメハメハスピーチが出なかったレースでは3歳のエーテルハスラー(父ラムタラ、母父アンブライドルド)が頭角を現す。
ヴィクトリアマイルは社台が購入したパピルスが勝利。
血統構成も優れているので産駒は高値で売れる事が予想出来、良い買い物をしたなと他のオーナーブリーダーは羨ましがった。
3歳戦ではトーセンサマルカンドがNHKマイルを勝利。
競馬ファン「うおでっか……🦍かな?」
オークスはここまで2勝ながら複勝圏内を外した事がない安定感を誇っていたツツジブロンドが勝利。
ナムラタイタンもこれが産駒初GⅠ。
フローラSを勝って挑戦権を得ていたピヴォタルキッド(父ハービンジャー、母父ラムタラ)は写真判定の末に惜しくも栄光を逃した。
ツツジブロンドは秋にも秋華賞を制して二冠。更にエリザベス女王杯も勝利する事になる。
ダートでは去年の全日本2歳優駿勝ち馬ティンムーニャンがジャパンダートダービーを勝利。
1800~2000mのダートではいぶし銀の活躍を見せていた6歳馬テンマバブルス(父ラムタラ、母父ストームキャット)が帝王賞を勝利。
ラムタラとフォーヌの全兄弟インブリードのマイネルグリフォンが北海道スプリントカップを勝利。
実質2×3という強い近親交配の影響か体調を崩しやすく、4歳夏までで7戦しか使えなかったが成長した事で健康面が安定。重賞勝利する力を身に付け、その後JBCスプリントを勝利するまでになる。
インブリードという点ではスノウブライドの2×4のテンマカルヴィニアが全日本2歳優駿を勝利。
母母母のドラジェはラムタラの半妹にあたる。
2歳戦ではホープフルSはリトルワイン(母父ナリタトップロード)が勝利。
11月の2週目にはテンマアラートとテンマレイア―の全兄弟(母父フォーティナイナー)がそれぞれ重賞初制覇(福島記念とデイリー杯2歳S)
この年はサトノダイヤモンドが大暴れ。皐月賞でマカヒキの2着に終わった以外は完璧な競馬。
競馬ファン「芝のGⅠはルメールを勝っとけばええ!」
サトダイの活躍もありラムタラのリーディング記録が遂に途切れる(それでも50億以上稼いでいるのだから尋常ではない)
2017年
パピルスがヴィクトリアマイルを連覇するとツツジブロンドが春秋スプリント制覇。
ツツジブロンドはBCフィリー&メアターフにも果敢に挑戦しレディイーライの3着。
春は惜敗が続いていたトレジャーアララ(母父デインヒル)が秋華賞、エリザベス女王杯と連勝。
同じようにクラシックでは善戦止まりだった昨年のホープフルS勝ち馬リトルワイン。
ぶっつけ本番で挑んだメルボルンCを見事勝利。
年末の有馬記念もサトノダイヤモンドの2着と好走。
昨年のマイルCSはモーリス、今年のヴィクトリアマイルはパピルス、スプリンターズSはツツジブロンドの2着と歯痒いレースが続いていた6歳牝馬のサートマナーが念願の勝利。
新馬戦以来の付き合いの国分恭介騎手もこれがGⅠ初勝利。
(ちなみにツツジブロンドはサートマナーの半妹である。サートマナーはサウスヴィグラス、ツツジブロンドはナムラタイタン産駒なので人間に置き換えてみるとなかなか複雑な関係)
ダートではGⅠになると勝てないレースが続いたテンマカルヴィニアが年の暮れの東京大賞典を制すると、エーテルハスラーがチャンピオンズCをレコード勝ちして春秋ダート制覇。
2歳戦ではアルパインアッパレ(母父サウスヴィグラス)が4戦4勝で2歳女王に戴冠。
川須栄彦騎手もこれがGⅠ初勝利。
牡馬の方でも社台が期待をかけるアウグストゥス(母父ガリレオ)が6戦6勝(うち重賞4)の大活躍。
ラムタラはディープからリーディングを奪回。
エーテルハスラーは今年も順調。
ダートでは他にマイネルグリフォンの全弟であるダノンアルキーとレイドスパイレンが5月1週にそれぞれかきつばた記念と兵庫CSを勝利。
クラシックの皐月賞はアウグストゥスが勝利。
主戦の武豊はユーキャンスマイルの方に騎乗していたので鞍上はテン乗りの武藤雅。
弱冠二十歳での皐月賞は和田竜二の21歳9ヶ月27日を上回る最年少記録。
なおホープフルSと弥生賞を勝たせたコーセー・ミュラーは阪神のアンタレスSで10着に敗れていた……
宝塚記念は14番人気のエボルブルスが絶好調のサトノダイヤモンドを下して勝利する大波乱。
前走9着とはいえ春先の成績を見れば十分買えたと馬券師達は後悔したが後の祭り。
完全に一皮剝けたエボルブルスは秋にはエリザベス女王杯と有馬記念を連勝して最優秀4歳以上牝馬に選出される。
秋の短距離路線ではサートマナーがスプリンターズSとマイルCSを連勝。
妹が規格外すぎるだけで重賞8勝のうち牝馬限定は2勝だけの彼女も十分怪物。
その妹(ツツジブロンド)は春に高松宮記念を連覇すると下半期はジ・エベレストと香港スプリントでレッドゼルの4着になっていた。
パイロ産駒のノーティヘロンがダートで活躍していたが……
芝でも活躍するパイロ産駒が現れる。
2歳の牝馬ではテンマ冠のラムタラ産駒が通算何度目かのGⅠ勝利。
この年はラムタラの全兄のフォーヌが種牡馬引退。
弟が異次元すぎただけで兄も常識外れの化物。
誰が言ったか欧州のガリレオ、シーザスターズ、日本のフォーヌ、ラムタラ。
2019年
ツツジブロンドによる高松宮記念3連覇。恐らく二度と現れないだろう大記録の樹立である(普通は4歳からの芝GⅠを連覇出来た時点で引退させるので)
その後も距離適性の壁で沈んだ有馬記念以外で活躍。
アーモンドアイさえいなければ安田記念、宝塚記念も連勝出来たのに……と陣営は悔しがった。
パイロ産駒のラストエンペラーが無敗のまま皐月賞を勝利。
気の早いファンやKRAは三冠馬の誕生だと盛り上がったが、日本ダービーは2000mを過ぎた辺りから急激に失速して16着。
2歳戦の阪神JF。
スマートファルコン産駒初のGⅠ馬は芝から登場。
ファンとしては様々な血統の馬がGⅠに出るのは盛り上がるが、一方でラムタラの血が入ると適性が読めなくなると調教師や助手は頭を悩ませる事になる。
秋天、ジャパンカップを快勝したアーモンドアイの秋古馬三冠を期待して中山に詰めかけた多くの競馬ファン。
しかし――
ドリームジャーニーの426kgを下回る最軽量424kgでテンマボーナスが勝利。
今年はエプソムC、中京記念、京成杯オータムHを3連勝。秋天も3着と好走していたが昨年のダービー(2400m)は9着、セントライト記念(2200m)は6着であり2500mの有馬記念は厳しいと見られ9番人気。
だが結果はご覧の通り。多くの馬券が紙吹雪のように競馬場に舞った。
そして年末。
20年の長きに渡って種牡馬として日本の競馬界を牽引してきたラムタラが遂に引退。
「重賞だけ」で1000勝近い記録は未来永劫、人工授精の禁忌が解禁されない限りは破られる事はないだろう。
以降は功労馬として日高の養老牧場で老後を送る事になるが、彼の元には連日多くのファンが訪れる事になる。