自分に文才と競馬知識があればこういう話を書きたかった……
- 2023/03/22
- 21:25
八坂宗吉にとって「ヨシズジェット」号は特別な馬だった。
雄々しさを感じさせる青毛の馬体ながら人懐っこいその牡馬は重賞を5勝。GⅠには届かなかったものの数々の名勝負を演じて帯同馬として赴いたドバイのレースも制したバイプレイヤーであった。
セリで一目惚れした宗吉は自分とジェットは運命の出会いだったと公言して憚らない。
6歳まで現役を続け多くのファンに見守られながら引退したジェット。子供にGⅠを獲ってほしいとファンは夢見るも、ジェットは父、母父、母母父が当時の主流ド真ん中。更に勝ち鞍が長距離に寄っていたり春のクラシックに間に合わなかった晩成傾向から種牡馬としての需要は見込めず、功労馬か去勢して乗馬だろうなとファンは諦めの境地。
だがジェットの血を後に残したかった宗吉はプライベートで繋養する覚悟を決めた。
仮に種付け料を安くしてもそこまで肌馬が集まらないのは予見出来たので宗吉は引退した調教師にアドバイザーを頼むと自腹を切って繁殖牝馬をかき集めた。日本でメジャーな血統が難しいならと海外のセリにも足を運んだ。
馬主孝行なジェットの活躍で5億以上の賞金を手にしていた宗吉であったが、彼はその全てを使い切ってしまう。周囲から「ジェットを我が子のように愛している」と評された宗吉だが費やした金に限れば実子以上だった。
その甲斐あって地方とはいえなんとか重賞馬を輩出する事に成功したジェットだったが、14歳といういささか早い年齢で遠行。
すっかり気落ちした宗吉に追い討ちをかけるように、彼は大病を患い入退院を繰り返すようになっていた。
子供達は競馬に関心はなく、体力と気力の衰えを痛感した宗吉はジェットのラストクロップの引退を見届けたら自身も馬主を辞めようと決意する。
──そんな折り、宗吉の耳に一つの噂が飛び込んでる。日高の小さな牧場で生まれた幼駒がいい動きをすると。
今はまだ母の名前と生年でしか呼ばれない幼駒の話は宗吉の胸をざわつかせた。聞き覚えがあったのだ。
ジェットが地方で活躍馬を出した翌年以降、散発的にではあったが他所からの種付け依頼があった。その中の一つが渦中の牧場であり、生まれた牝馬の名前も合致する。
セリで売れ残り主取りとなった後は地方で走っていた所までは宗吉も知っていたが、その後手術や入院でそれどころではなかったのだ。
──言葉に出来ない予感に突き動かされ、病を押して牧場を訪れた宗吉はそこで再び運命と邂逅する。
※なおここで言う地方の重賞とはSPIやM1の事で交流重賞(Jpn)ではありません。
勝ち鞍は多分
ドバイゴールドカップ
阪神大賞典
京都大賞典
ステイヤーズステークス
中山金杯
とかその辺。
それで菊花賞、春天は2着でジャパンカップや有馬記念で八大競走勝ち馬に先着してそう。
書き終わった後でダート馬の方がより一層種牡馬の需要なさそうだと思ったけど ま、いっか。
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