「ダーク馬主は本質的には競馬を愛する心を持っているが、自分の意思では新人騎手に名馬を与えて脳を焼きたい気持ちをコントロールできない…」 ハクタイユー(偽)系で往く白毛馬挑戦録 第30回
- 2023/01/10
- 16:00
ファンから高い人気を得ていた二冠馬ホマレビャクヤだがレースは苦戦。
手薄だったロッキンジSは勝つも強豪が参戦したレースではいまいち輝けず。
翌年の現役続行も視野に入れていた陣営だったが未だにイントラムロス5歳時のトラウマが根強い九郎の意向で引退する運びに。
昨年は菊花賞2着、有馬記念5着と好走していたシカネーダーだが……
これまで海外遠征で惨敗した経験は無数に存在する九郎だったが、国内のレースでここまでズタボロになったのはショックが大きい。
その後のレースでも精彩を欠いていたが栄えある豪州のメルボルンカップで復活。悲願の芝GⅠ勝利。
競馬ファン「あの落ち着きのなさで還暦か……」
3歳クラシック。
武士沢騎手がクラシック初制覇。
ルーキスオルトゥスにとっては産駒が連覇。ホマレビャクヤが突然変異ではなく安定して芝の有力馬を出せると見せつけた事実は大きい。
秋は古馬との戦いを選択。秋古馬三冠レースで3着、2着、4着とまずまずの成績。
マイルの桜花賞では本領発揮が出来なかったキオナティも2400mのオークスではなんとか勝利をもぎ取る。
秋、ここまでのレース内容からステイヤーだと判断されたキオナティは秋華賞ではなく菊花賞に出走。
グレード制導入後はサルジュアミール、レウコケファラに続く三頭目、更にレウコケファラとの母娘菊花賞制覇。
牡馬に比べて残せる産駒数に限りがある牝馬によるこの記録の価値は計り知れない。九郎は馬主席で小躍り。
ここも母娘制覇がかかっていたが結果は2着。残念ではあるが、レウコケファラがおかしかっただけで3歳牝馬の成績としては上々。
シャウラは春先には渡欧し現地でしっかり調整を重ねてGⅠに挑む。
……が、やはり3歳になったばかりの馬に長期の遠征は負担が大きかったのか上半期は結果が出せず。
「素直に国内に専念すれば良かったのでは?」という声も囁かれたが陣営は遠征を続行。その執念は実り、秋には約1年振りのGⅠ勝利。
何気にストレンジワールドにとっては二頭目の英セントレジャー勝ち馬である。
現役時代は菊花賞で2着だった事を思えば不自然でもなんでもないのだが、主な勝ち鞍が春秋マイル制覇だという事実を付け加えると途端に「なんなんだお前」感が出てくる。
その後、母父イントラムロスが敗れたチャンピオンSに挑んだが結果は5着。
リサールは2勝クラスに昇格。
競走馬全体から見ると頑張っている方だが、プロタゴニストやマッツィーニ、ミッドナイトサンを介さないハクタイユーの直系としてはデカい所を一つでも獲って箔付けして種牡馬入りしたい。
サクラチヨノオー直系のグルースドラコはホープフルSで11着。
しかしまだ馬体に成長の余地があると九郎はへこたれない。
ルーチェはまずまずの成績で2歳戦を終了。
九郎「やっぱ
和田竜二は
神だわ」
またルーチェの叔父に当たるホワイトラヴがチャンピオンズCを勝利。
一応2歳時には全日本2歳優駿で2着になっているが、これは買えないと嘆く馬券師が多数。
8月。1月にデビューした藤田菜七子騎手だったが未だに未勝利。
元よりベテランに有力馬が集中する傾向にある競馬界。更にこれからの季節は本国でレースがない欧州の外国人ジョッキーが出稼ぎに来るので若手は苦しい立場に置かれていた。
そんな中で彼女に忍び寄る怪しい影。
九郎「グヘヘヘヘ……うちの馬に乗りたかったら、どうすればいいか分かるよね?」(パスポートの申請書類を差し出しながら)
素質馬を多数預託している立場を盾に調教師の意思を無視して主戦騎手を決める横暴馬主の姿がそこにはあった。
ヘルセの父ディグニティゲストは何頭ものGⅠ馬を輩出した名種牡馬。母セレーネは繁殖成績こそ微妙だが現役時代は全日本2歳優駿を勝った強豪。
その産駒の主戦に選ばれたのはキングヘイローに乗れた福永祐一並の幸運である。
そして藤田騎手はそれを一過性の幸運ではなく次に繋げる事に成功する。
重圧を撥ね退けて3連勝。デビュー1年目の重賞勝利で一部馬主の目も変わってくる。
競馬ファン「いきなり武士沢チャレンジ(海外遠征)しないなんて河島九郎も年を取って丸くなったな……」
12月には阪神JFに出走。
ここまで重賞を含む3戦3勝。本来なら1番人気に支持されてもおかしくないが9番人気。その理由が騎手にあるのは誰の目にも明らかだった。
九郎「いや、それにしたってシビアすぎない!?」
応援馬券とか買ってやれよと思いつつ、この方が気負わずに騎乗出来るかも……と前向きに考える九郎。
そして結果は7着。
陣営は体つきからマイル向きの馬ではないと考えていたので敗北自体は折り込み済みだったが、藤田騎手には手痛い洗礼となった。
とはいえ競馬の世界で生きていくなら避けては通れぬ障害である。
未だに「勝ったら父親のお陰、負けたら息子のせい」と言われる河島千歳などもいるし。
メジロモーリス、大阪杯、安田記念、秋天をそれぞれ連覇。1600~2000までなら無法な強さ。
ストレイトガールも7歳牝馬とは思えない元気さ。
また「サトノ冠の馬は大レースを勝てない」というジンクスを打ち破りサトノダイヤモンドがダービー制覇。
桜花賞とNHKマイルのメジャーエンブレム、ジャパンCと有馬記念のキタサンブラックは例年なら選出されてもおかしくない成績だったが残念ながら選ばれず。
小島師が2年連続で優秀技術調教師を受賞。
もはや恒例となったディープとキンカメのワンツー。
アメリカではエリートロスが遂にGⅠ制覇。
カリフォルニアクロームさえいなければもっと早かったのだが……
今年の引退種牡馬はフォースグローリー。
しっかり重賞馬を出していて偉い。
帰国後は九郎の造った施設で全兄のエフィンジャーやスパーブリネージュなどと一緒に功労生活となる。
クラウンアルビオン、他牧場からの種付け依頼は多かったが実は河島牧場の牝馬への種付けは0。
九郎もサポートしたかったが父父プロタゴニスト、母父マッツィーニ、更に河島牧場の基幹牝系に属するアルビオンには繁殖牝馬を用意出来ないというまさか(でもない)事態が発生。セントサイモンの悲劇の再演である。
(一方のハイヤーペイトロンは相応のフォローを受けている)
一応九郎もインブリード対策として外部の血を取り入れているのでしばらくの辛抱である(まあ、時間が経つと種牡馬のライバルも増えるが)
今年はGⅠ5勝コンビが引退。
それぞれエターナルガードとルーキスオルトゥスの後継として頑張ってもらいたい。
今年はセシルゲストから続く超名牝系のジャウハラと武士沢騎手の相棒だったマラスピーナの血を引くレオポルディーネが入厩。
欧州のガリレオ系に頼る姿に、血の閉塞を避けようとする苦心が窺える。
競走成績
・テューティラリー
フェブラリーS 3着
高松宮記念 1着
京王杯SC 2着
安田記念 4着
サンディエゴH 10着
A.G.ヴァンダービルトH 1着
セントウルS 11着
スプリンターズS 1着
マイルCS 10着
・ホマレビャクヤ
ジェベルハッタ 5着
ドバイシーマクラシック 4着
ジョッキークラブS 3着
ロッキンジS 1着
宝塚記念 4着
エッティンゲンレネン 4着
アイリッシュチャンピオンS 2着
ニッカボッカS 1着
BCターフ 7着
・シカネーダー
京都記念 18着
阪神大賞典 4着
天皇賞(春) 5着
七夕賞 4着
小倉記念 10着
新潟記念 1着
コーフィールドC 2着
メルボルンC 1着
・ヘオスフォロス
共同通信杯 1着
スプリングS 1着
皐月賞 1着
日本ダービー 3着
エディーリードS 11着
アーリントンミリオン 3着
京都大賞典 1着
天皇賞(秋) 3着
ジャパンC 2着
有馬記念 4着
・シャウラ
きさらぎ賞 3着
クレイヴンS 6着
イギリス2000ギニー 2着
アイルランド2000ギニー 4着
ヨークS 16着
キングジョージ 13着
リュテス賞 4着
イギリスセントレジャー 1着
ショードネイ賞 2着
チャンピオンS 5着
・キオナティ
フラワーC 1着
桜花賞 4着
オークス 1着
マルレ賞 1着
ドイツオークス 1着
ドンカスターC(英) 1着
菊花賞 1着
有馬記念 2着
・リサール
新馬戦 1着
3歳1勝クラス 3着
3歳1勝クラス 8着
3歳1勝クラス 2着
南相馬特別 7着
3歳上1勝クラス 5着
3歳上1勝クラス 3着
3歳上1勝クラス 1着
・ルーチェビアンカ
2歳未勝利 1着
シャンデリアS 1着
フリゼットS 1着
BCジュヴェナイルフィリーズ 3着
全日本2歳優駿 2着
ヘルセ
2歳未勝利 1着
アスター賞 1着
アルテミスS 1着
阪神JF 7着
・グルースドラコ
新馬戦 1着
ベゴニア賞 3着
ホープフルS 11着
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