「La victoire est à moi!」 ハクタイユー(偽)系で往く白毛馬挑戦録 第25回
- 2022/12/06
- 16:00
2011年
九郎(エニフさん、いつの間にそんなおっさんくさい口調に)
レクスソールは3歳初戦のきさらぎ賞こそ3着だったものの続く報知杯弥生賞ディープインパクト記念(皐月賞トライアル)を勝利。
皐月賞の有力候補として挑んだが……
サンライザーとの親子制覇ならず。
途中まではトップだったのだが中山の坂で消耗した所を金色の暴君に捕まる。
綿兜「ハクタイユー系の競走馬はスタミナ血統。上がり3Fでサンデーサイレンス系とキレ脚勝負は荷が重いですね」
九郎「ロバストランポートはダンスインザダーク、スペシャルウィーク、ディープインパクトなんかにも負けない末脚があったけど、産駒には遺伝しなかったからなぁ」
綿兜「馬主も2歳の頃から活躍する馬が欲しいので晩成傾向の強いランポート産駒は敬遠されがちです」
九郎「2歳時に重賞を勝ってないと海外遠征もやりづらいしな」
綿兜「そんな視点で見てるの多分九郎さんくらいです」
次走のダービーではなんとか一矢報いたいと奮起した陣営だったが……
九郎「ああああ! ダメか!」
綿兜「何か……ストレンジワールド感が出てきましたね」
九郎「ストレンジワールド感!?」
九郎「……」
綿兜「……ひとまず来年の大阪杯かドバイを目標にGⅡGⅢで下積みですね」
九郎「だなぁ。それはそうと外ラチに叩きつけられた池添君は大丈夫だろうか」
綿兜「まあ、騎手の生命力は常人より遥かに上ですから。その辺は海外拉致の常習犯である九郎さんならよくご存知だと思いますが」
九郎「言い方!」
※なお菊花賞5着は何気に父と同じだった。
デビュー以来好走はすれど勝ち切れなかったシナイードだが兵庫チャンピオンシップでJpnⅡながら重賞初制覇。
桜花賞終了後にダートで勝利。これによって陣営は次走に悩む。
調教助手や厩務員はオークスかJDDを目指すと考えたし九郎はエイコーンステークスの日程を確認した。
そんな中で挙手したのが綿兜。
綿兜「実は欧州の深い芝はダート馬の方が向いているのではないかという意見が一部であって。シナイードは血統的にも相性が良さそうなのでそちらを試してみたいんです」
九郎「ほーん。という事はつまり――」
綿兜「英オークス出走を希望します」
地方重賞を一つ勝っただけの馬で英国遠征。普通の馬主がこんな事を言われても拒否するか少なくとも躊躇するだろうが九郎はノリノリだった。
果たした結果は――
九郎&綿兜「「イエーイ!」」(ハイタッチ)
フランスとドイツのオークスは既に勝利した事があったがエプソムオークスは初。日本調教馬としても初の快挙である。
調子に乗った九郎は欧州オークス三冠にも挑戦。
しかし2戦目のアイルランドオークスでは英オークス2着のデインドリームの逆襲にあう。
九郎「デインドリームってデインヒル産駒じゃなかったのか……」
綿兜「一応母父はデインヒルですが。……もしかしてディープスカイをディープインパクト産駒だと思ってました?」
九郎「いや、それは流石に時期がおかしいから大丈夫だ。……トウケイニセイとトウケイヘイローは同じ馬主だと思ってたが」
3戦目のヨークシャーオークスではスノーフェアリーの2着。
九郎「きえええええええい! またお前か!」
これには競馬ファン、「やっぱりストレンジワールドの半妹かぁ~」と妙な納得。
その頃の日本では怪物牝馬が暴れていた。
昨年のオークスに続きヴィクトリアマイル、安田記念の姉妹連覇。
競馬ファン「ウオッカといいフロレゾンソレイユといい女の子をイジメるな😠」
九郎「なんでこんな狂犬に……」
綿兜「インブリードのせいでは?」
九郎「~♪」
今年の九郎はサンライザー産駒の牝馬二頭で凱旋門賞に挑戦する心算。
馬場も変わった上に距離も変わるとミネットが戸惑うだろうと、ひとまず欧州初戦はマイル。
ヨーロッパのマイル戦ではジャックルマロワ賞などと並ぶサセックスステークスを勝利。
欧州の芝でも問題ない事をアピール。陣営の期待は否が応でも高まる。
今年の凱旋門賞にはミネットとシナイード以外にもブエナビスタ、ヴィクトワールピサ、ナカヤマフェスタと日本馬が計5頭も参戦。
これだけの面子が揃えば勝ち負けはあるだろうと九郎を含めた日本の競馬ファンは楽観とも言える期待を持ってレースの発走を待った。
が……
雨のロンシャンという日本馬には過酷な馬場状態に総崩れ。応援団の悲鳴がロンシャンに木霊した。
あまりの惨状にハリケーンラン、エレクトロキューショニスト、ハーツクライという3頭の名馬の競走生命を縮めた2006年、死のキングジョージの再来にならないかと競馬ファンは戦々恐々。
失意の帰国を果たしたブランシュミネットは温泉でリフレッシュ。
日本馬代表として他国馬を迎え撃とうとしたが――
白くないスノーフェアリーの連覇を許してしまう。
有馬記念出走の案もあったが、もう十分走ったという九郎の鶴の一声で引退が決定。
まずは天皇賞(秋)を快勝してさらっと春秋制覇。
他馬を子供扱いする非常に力強い競馬だった為「クラシック三冠は無理だったけど秋古馬三冠は行けるのでは!?」とファンとKRAは盛り上がる。
その熱狂は去年の皐月賞後の空気に酷似し、結果もまた同様だった。
ライバルのヴィクトワールピサがジャパンカップ連覇。
古馬になってから勝ち星から遠ざかっていたヴィクトワールピサの復活。
愛馬が負けて悔しい反面、ダービー馬が古馬になっても強いのは嬉しい九郎だった。
九郎「大した事のない馬にダービーを奪われたとなったらやってられないからな」
そして年末の大一番、有馬記念。
前走で復活したヴィクトワールピサだが裏を返せば成績が不安定でありここでは3番人気。
1番人気はカンナカムイで2番人気に支持されたのはオルフェーヴル。
センテレオコロナが無敗の三冠馬ディープインパクトと激突したようにカンナカムイもまた無敗の三冠との激突の時を迎える。
九郎「逆説的に言えば無敗の二冠馬だったサクラチヨノオーも怪我さえしなければ三冠を達成してジャパンカップか有馬でオグリキャップと戦っていた……?」
綿兜「……まあ、マルゼンスキーはホリスキーとレオダーバンを輩出しているので血統的に走れなくはなさそうですが」
イントラムロスとサクラチヨノオーの対決に脳を焼かれた九郎の妄言はさておき、レースの行方は――
ヴィクトワールピサ、再びカンナカムイ、更にオルフェーヴルも下して日本競馬の頂点へ。
2歳戦ではアンテイアが快勝。
GⅠ馬の姉と妹に挟まれたレクスソールの明日はどっちだ!?
(一応GⅢチャンレンジカップは勝利)
もう一頭の2歳所有馬であるカロルスフェルトはホープフルSに出走。
「掲示板に入れば御の字だなぁ」と思いつつ中山競馬場で偶然出会った綿兜と駄弁る九郎。
綿兜「ホープフルSには私の推し馬も出走してるんです」
九郎「お前の推しって事は白毛か芦毛……ゴールドシップ?」
綿兜「ご明察です」
九郎「へー、星旗やクレオパトラトマスの子孫なのか」
綿兜「九郎さんは日本の在来牝系にはあまり興味がない感じですか?」
九郎「そうでもないが、昔は評価低かったじゃん。シラオキ系のスペシャルウィークが三冠獲ってからは見直されたけど。ハクタイユー系を売り込む為には血統表に煌めくような種牡馬が並ぶ繁殖牝馬が必要だったから……」
まるでオーナーブリーダーのような苦悩を吐露している間に発走の時間を迎える。
カロルスフェルト激走。
「順調に成長したら海外の賞金の安いGⅠなら勝てるかな?」という評価だった九郎はビックリ仰天。
一応は正装していたが挙動不審のまま口取り式を迎える。
この年は久し振りにホマレクラブからGⅠ馬が誕生。
世界的名牝スぺシャルの末裔。その実態はチャンピオン・ディスタンス専用機というピーキー(牝馬なら将来の行き先には困らないが)
血統はニジンスキーの3×4、レイズアネイティヴの4×4。
ハクタイユーの3×3を平然とやるマルセル・ブサックフォロワーな九郎にしては常識的な配合である(インブリードに関しては後年「エルコンドルパサーやエネイブルやハプスブルク家に比べればよっぽど配慮してるよ!」と反論している)
また、よそに売却した馬の中からもJpnⅠ勝利馬が誕生。
綿兜「近親にクロスマークやアピロデュナミスがいる良血馬ですね。白毛なのになんで売っちゃったんですか?」
九郎「雪野さんが欲しがってたし、それにぶっちゃけそんな走るようには見えなかったから……」
綿兜「(カロルスフェルトといい、この人って相馬眼はあんまりないな)タケシバオーやアンバーシャダイ、ダンシングブレーヴ、シアトルスルー、サンデーサイレンスなどの名馬でよく聞くエピソードですね。まあ、走らないように見えて本当に走らなかった馬はその数百倍はいるんでしょうが」
古馬だけでなく同期のウインバリアシオンにも先着を許した有馬記念の印象は悪かったものの、それでも無敗三冠の偉業を覆す程ではなくオルフェーヴルが年度代表馬に選出。
ブランシュミネットは本質的にはマイラーおじさん「ブランシュミネットは本質的にはマイラー」
九郎「実際どんなん?」
綿兜「いや普通にクラシック・ディスタンスもこなせましたよ。あの時のロンシャンで勝つには3000m以上を走りきるスタミナが必要だったというだけで」
九郎「ロバストランポートの方は多分大丈夫。イントラムロスは……」
アメリカでGⅠ3勝したスペシャルウィーク産駒のアンブレラエイヴィアンスが種牡馬入り。
サンデーの血がアメリカに戻ったのはなかなか感慨深い。
今年の引退馬はブランシュミネット。
九郎「競走馬にとって真の勝負はレースじゃない。ブエナビスタやアパパネ、スノーフェアリーやデインドリームに負けない強い仔を生むんだ」
入厩は三頭。
サイアーオブサイアー、マッツィーニの末裔、テューティラリー。
ついぞGⅠに届かなかった母の無念を晴らしたいスノウスケープ。
ディグニティゲストが産駒成績で九郎の脳を焼いた結果生まれたディグニティヌーリ。
今年限りでマッツィーニは種牡馬を引退。
米国での繁殖生活を終えて生まれ故郷に戻ってきた。
ハクタイユー産駒初のGⅠ馬にして自身も偉大な種牡馬となったマッツィーニ。
その父系を絶やす事なく繋げていこうと九郎は決心する。
競走成績
・カンナカムイ
中山記念 1着
大阪杯 2着
天皇賞(春) 1着
宝塚記念 1着
デルマーH 1着
ソードダンサーS 1着
京都大賞典 1着
天皇賞(秋) 1着
ジャパンC 2着
有馬記念 2着
・ブランシュミネット
ドバイシティーオブゴールド 3着
ドバイシーマクラシック 3着
ヴィクトリアマイル 1着
安田記念 1着
ヨークS 1着
サセックスS 1着
フォワ賞 3着
凱旋門賞 12着
エリザベス女王杯 2着
・レクスソール
きさらぎ賞 3着
弥生賞 1着
皐月賞 2着
日本ダービー 3着
ユジューヌアダム賞 14着
ドイツダービー 2着
セントライト記念 1着
菊花賞 5着
チャレンジC 1着
・シナイード
クイーンC 2着
チューリップ賞 4着
アーリントンC 2着
兵庫CS 1着
ロワイヨモン賞 1着
イギリスオークス 1着
ハンザ賞 4着
アイルランドオークス 2着
ハンガーフォードS 8着
ヨークシャーオークス 2着
ブランドフォードS 1着
凱旋門賞 8着
ミスタープロスペクターS 1着
マリブS 2着
・カロルスフェルト
新馬戦 1着
百日草特別 1着
カトレアS 1着
ホープフルS 1着
・アンテイア
新馬戦 1着
紫菊賞 3着
白菊賞 1着
阪神JF 1着
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