教えてとりんさま！ 「遺伝子注射」

「とりんさまは遺伝子注射って何か知ってます？　知り合いがコロナワクチンの正体はこれだって言ってたんですが」

「……！　君も世界の真実に目覚めてしまったか。遺伝子注射というのは人類を超絶進化へと導く究極のナノマシンを打ち込む事さ。このナノマシンは別名を「リリスの涙」とも言うね」

「……」

「発端は「リリス」と呼ばれた人工知能が人間の遺伝子構造を解明し、人間の細胞に特殊な刺激を与える事で進化が促される事を発見した事だ。「リリス」を保有する研究機関は秘密裏に人体実験を行い「リリスの涙」を完成させた。彼等は最終的に人類を新たなステージへ引き上げようとしているんだ。この組織の名を「世界平和教導政府」（World Peace U）という」

「そ、そのナノマシンを注射されると具体的にはどうなるんですか？」

「まず全身の血の流れが高速化するんだ。更に神経の働きが高まり、肉体の性能が著しく上昇する」

「凄いじゃないですか！　まさしく超人の誕生ですよ！」

「まあ待ちなよ、君。血の流れが激しくなった場合大量の酸素を消費するから心臓に負担がかかるんだよな……そして血圧も大幅に上がり、脳や血管にも大きなダメージを負う」

「……それ、本当に進化なんですか？」

「少なくともWPUのメンバーはそう考えている。彼等の実験結果では1000人に1人程度の割合で適合者が生まれているそうだよ」

「それ以外の人間は切り捨てると？」

「世界を進歩させる為には選別が必要だというのが彼等の主張さ」

「そんなやり方で世界の進歩なんて認めませんよ……」

「私もさ。だから私はWPUと対立する組織で活動しているんだよ」

「とりんさまが？　WPUと対立するとは意外ですね……」

「彼等の理想論には疑問を覚える部分があるからね。もし私の大切な友人達にまで危害が加えられるようなら……その時には全力で戦わせて貰うさ」

「あのとりんさま！　僕も手伝わせてください！」

「ふむ……しかし危険だよ。WPUの人型自律戦闘アンドロイド・通称：アガルタは単機で戦車や戦闘ヘリを撃破可能と言われているし」

「僕はもう逃げないって決めたんです！　それに自分の身くらい自分で守れなくてどうして家族を守れるんですか！？」

「君の覚悟は解ったよ……。ならば共に戦おうじゃないか！」

「はい！」

「奴等は予防接種と偽ってリリスの涙を注射しようとしている。まずはこの会場を叩く！」

「分かりました！」

こうして僕は世界の平和を脅かす悪の組織と戦う事になったのだが……それはもう少し先のお話なのだ……。

（了）