おれは正当な読者 プリンプリン准将が好きだった(ONE PIECE 二次創作)
- 2022/09/05
- 12:00
麦わら帽子の海賊が魚人海賊団アーロン一味を撃破。その報告書をプリンプリンは病室のベッドの上で眺めていた。
胸に去来するのは圧政に苦しむ民衆が救われたという安堵と自分が何も出来なかったという無力感。それどころか同じ海軍の大佐がアーロンの悪行を隠蔽していたのだ。そしてそれをどこのものとも知れない海賊が打ち破り、その裏で自分は何の成果も出せぬまま信頼し合った部下を喪いおめおめと生きのびた。これでは正義を守るべき立場としてあまりに情けないではないか。
「くっ……!」
報告書を掴む手に力が入り紙が歪む。全身を掻き毟りたくなる衝動の中でふと思い出すのはかつて教官であった偉大な海兵の言葉だった。
『海兵は市民を守る存在だ。だからお前たちは市民の模範たれ。常に堂々としていろ、決して弱みを見せるな。そうすれば市民は必ず我々についてきてくれる』
自分や同期たちを教え導いてくれた恩師の言葉は今の自分を形作る原点であり、同時に今の自分に欠けているものであった。
自分は誓ったはずだ。いつか立派な海兵になり尊敬する恩師に報い、立派に正義を貫く人間になるのだと。
「……」
だが、そんな誓いなど何の意味もなかった。あの時、あの瞬間に何も出来なかった。所詮は海の広さを知らない若造の理想論に過ぎなかったのだ。どうしようもない悔しさが込み上げてくる。しかし――
「…………本当に悔しいのは海賊の脅威に晒されている市民だろうに」
プリンプリンは包帯だらけの身体を見て自嘲気味に笑う。
軍医からはリハビリ次第で日常生活に支障はないが軍務へ復帰出来るかは分からないと診断を受けていた。同時に、退役して治療に専念するのも選択肢の一つだと勧められた。支部とはいえ将官だったのだからそれなりの退職金が出るだろうとも。
心が揺らがなかったと言えば嘘になるが、それでも彼は海軍を辞めるつもりはなかった。彼の中には未だに燻り続ける炎があったからだ。プリンプリンの目に再び強い光が灯る。
『お前達が弱ければ市民は守れないぞ』と恩師は自分達をしごきながら常に言い聞かせてきた。
今の自分が弱いのは覆しようのない事実。だからといって苦しむ市民に背を向けるのかと問われればはっきり否と答えられる。守られるべきもののために戦うことを諦めるなど絶対に有り得ない。信念を貫くには力が必要な時代なのだとしても無力な人々を置き去りにしていい理由にはならない。
ならば今こそかつての恩師の教えに従うときだろう。
(そうですよね、ゼファー先生)
だからこそここで腐っているわけにはいかない。たとえ今は満足に身体を動かすことが出来なくとも必ず再び立ち上がってみせる。それが今自分に出来る唯一のことだと信じて。
決意を新たにしたプリンプリンは窓の外へと目を向けた。外は既に日が落ち夜の帳が下りようとしている。
「待っていろよ、海賊ども」
夜空に浮かぶ三日月を睨みつけながら彼は不敵に笑った。
◆ ◆ ◆ ◆
【あとがき】
FILM Zでプリンプリン准将がゼファー先生の教えを守って泣きながらNEO海軍と対峙するシーンを見た時から書きたいと思っていたエピソードです。
ちなみにプリンプリン准将は「ONE PIECE」のキャラクターの中では個人的に一番好きなキャラです。
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