「この日から――馬主は少しずつ、おかしくなり始めた。」 ハクタイユー(偽)系で往く白毛馬挑戦録 第1回
- 2022/07/25
- 16:00
ウイポ
Winning Post 9 2022
ウイニングポスト9
WP9 2022
ロールプレイしながら進めるウイポのレポ。オリキャラ注意。
1979年、北海道の浦河町で生まれたホマレエースいう名の白毛の幼駒に心を奪われた若きオーナーブリーダー、河島九郎。
ハクタイユーと名付けられデビューしたこの馬は残念ながら競走馬として大成する事は出来なかったが、その血をなんとしても残したいと考えた九郎は馬主に掛け合い自身の牧場で繋養する事を承諾してもらう。
そしてここから奇特なホースマンの挑戦が始まる――
1983年
心底ハクタイユーに惚れこんでいた九郎だが、それはそれとして父系が貧弱である事は認めざるを得なかった。
このままでは種牡馬として結果を残す事は出来ない……そう考えた九郎は母系で補おうと海外にまで足を伸ばす。
父ノーザンダンサー、母父トムフールのGⅠ6勝馬サンタアストレンティアやGⅠ馬を2頭生んだタームマーメイド(父リボー、母父トムフール)などの良血の繁殖牝馬を買い漁る怪しい東洋人の存在は各国のホースマン達の間でフォークロアとして語られるようになる……
なお、ハクタイユーと相性の悪い牝馬はどんなに血統が良くともあっさり手放した為、間接的に日本競馬のレベルが上昇するのだがそれはまた別のお話。
PRに奔走する九郎。
その甲斐あってハクタイユーを付けてみようかと考える牧場も出てくる。
(もっとも、三好正義氏が牧場長を務める日高スタリオンには繁殖牝馬がいないのだが……)
結果は6頭。
しなかしながら、オープン馬にもなれなかった上に同父に活躍馬がいない血統、更に零細牧場には悩ましい種付け料でも6件の依頼が来たのはむしろ立派だと九郎は前向き。
そして自前で用意した25頭の繁殖牝馬全てにハクタイユーの種を付ける。
1984年
河島牧場で生まれた25頭中7頭が白毛。
この年の他牧場からの種付け依頼4頭。
1985年
25頭中11頭が白毛。
他牧場からの種付け依頼2頭に落ち込んだが、それが普通だと九郎は相変わらず前向き。
またこの年、九郎とは関係ないが競馬界は沸いていた。
皇帝シンボリルドルフが無敗で9冠を達成、更にシリウスシンボリが日本競馬の悲願である欧州GⅠを制するなどシンボリ牧場無双。
ワンマンだが結果は出す和田共弘氏に競馬関係者は彼の力量と競馬界への貢献を認めざるを得なかった。
そしてその年の暮れ、遂にハクタイユーの初年度産駒が入厩。
母のカルボナリアバヴは現役時代にディスタフHを勝利しており、本来なら条件馬をつけていいような馬ではない。
この配合を知った関係者はみなお笑いだったという。
しかし――
1986年
マッツィーニ、全日本2歳優駿勝利。
ハクタイユーは初年度産駒からJpn1とはいえ大金星。
白毛馬初の快挙は各所で大きな反響を呼ぶ(この頃はマグレ扱いや所詮地方の重賞という反応も多かったが)
そんな中で九郎は結城江奈、雪野直純と並ぶ日本三大芦毛キチとして名を馳せていた調教師の上井綿兜(うえい やすと)と知り合う。ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何者でもない。
綿兜「芦毛、良いですよね。白毛ももちろん好きです」
また九郎は白毛馬専門の一口馬主の法人「ホマレクラブ」を作る。
ノウハウも何もない新規参入であったが採算度外視で募集額を最低限にしていた為、それなりに会員を集める事に成功する。
おおぅ……となる勝ち上がり率だが、まだ新馬戦を迎えていない馬もいるので実際には23頭中12頭は勝ち上がっているのでそこまでは悪くない。
この年は新たに3頭の馬が入厩。
マッツィーニが活躍した後ならともかくそれ以前に父ノーザンダンサー、母父ラウンドテーブルの繁殖牝馬にどこの馬の骨とも知れない種を付ける九郎に対して関係者は「あいつ頭おかしいよ……」とドン引きした。
綿兜をはじめとした一部の好事家は腕組みしながら「うんうん」と頷いたが。
綿兜「ただ、このイントラムロス、競走能力は一流だと太鼓判を押しますが、バリバリの欧州血統だから日本だとどこまでやれるか……」
またイントラムロス以外にも二頭入厩。
競走成績
・マッツィーニ
新馬戦 1着
ヤマボウシ賞 1着
JBC2歳優駿 1着
全日本2歳優駿 1着
1987年
九郎「KRAが3歳のダート馬が出られる春の重賞を新設してくれないから畜生!」
という事で九郎はドバイにいた。海外のレベルの高さを知る九郎としては掲示板に入れば御の字だと思っていたが――
九郎「!?」
綿兜「!?」
各国関係者「!?」
まさかまさかの快挙。
ドバイミーティングに集った一流のホースマン達の前で勝利してみせた事は九郎の想像以上の反響を呼び、海外の好事家達からも注目を集め引退後に海外牧場で繋養しないかという話も出てくる。
調子に乗った九郎は本場アメリカのケンタッキーダービーに登録する。
騎手については乗り代わりの話もあったが九郎は大塚騎手で行くと断言。
川崎で喜んでから僅か約半年後にケンタッキーダービーに出走しているとは夢にも思わないだろう。
マッツィーニの祖母アメリゴズファンシーはゲイムリーに勝った事もある牝馬であり、人間サイドはアウェーながら馬の方は意外にも人気は高かった。
そして迎えたケンタッキーダービー。
日本調教馬による初の挑戦は望外の成果を出した。
その後のプリークネスSでは連戦の疲労が出たのか9着と惨敗するもベルモントSでは3着と意地を見せる。
ハクタイユーを譲り受けた当初は地方で細々と走らせる未来も十分覚悟していた九郎だったが、この結果に彼の脳は完膚なきまでに破壊される……
帰国した後もマッツィーニは連戦連勝。一気に日本ダート界の大将格となる。
ちなみに一部の関係者の間では「マッツィーニは突然変異でしょ?」という声もあり、九郎も内心でそうかもしれないと思っていたのだが――
ハクタイユー産駒から2頭目のGⅠ馬が誕生。
これを受けていよいよハクタイユーは"本物"かもしれないと生産者の間でもざわめきが広がる。
サイアーランキングでも2位になり九郎としてはしめしめといった所だったが、産駒の活躍に比例して種付け料が上昇した割に勝ち上がり率はいまいちだった結果中小牧場からは敬遠され種付け依頼に大きな変化がない事を彼はまだ知らない――
そんなこんながあったが1987年の日本競馬界はこんな感じ。
九郎「ニッポーテイオーが強すぎんだろ。香港マイルも勝ってるしよ。そりゃ文句なしで年度代表馬だ」
綿兜「個人的にはマイルCSではそんなテイオーの2着だったホクトヘリオス、ダービー、菊花賞で2着のタマモクロスの来年の飛躍に期待ですね」
九郎「お前芦毛なら誰でもいいのか」
綿兜「そうですが?」
この年は2頭が入厩。サルジュアミールはマッツィーニやイントラムロスに匹敵すると牧場長が絶賛した逸材。
競走成績
・マッツィーニ
バージナハール 1着
UAEダービー 1着
レキシントンS 1着
ケンタッキーダービー 2着
プリークネスS 9着
ベルモントS 3着
ジャパンダートダービー 1着
サマーチャンピオン 1着
南部杯 1着
JBCクラシック 1着
チャンピオンズC 1着
東京大賞典 1着
・イントラムロス
新馬戦 1着
百日草特別 1着
京都2歳S 1着
ホープフルS 1着
・ミッドナイトサン
新馬戦 1着
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