2012年
ドバイを快勝したシナイード。
キングジョージと凱旋門賞に挑戦する予定のシナイードは過去のフロレゾンソレイユやブランシュミネットとは違い日本には戻らず欧州に向かって現地でみっちり調整する事に。
欧州のGⅠ初戦タタソールズゴールドカップは勝利するが――
キングジョージでは今年の英ダービー馬キャメロットに一蹴される。
3kgの斤量差さえなければ……と九郎は拳を握るも、それを言い出すと昨年の凱旋門賞の惨敗が一層惨めになるので黙るしかない。
九郎「それはそうとあの馬ってキンチェムの子孫なのかよ。なんか神話の人物に会ったような気分だ」
綿兜「まあ、コーナンルビーがキンチェムより古い高砂の末裔ですから。父系と違って牝系は探せば色々残っていると思いますよ。GⅠを勝つ馬を出せる活力が残っているかはともかく」
シナイードはその後ヴェルメイユ賞でも2着、凱旋門賞では4着と善戦はしても勝ち切れない。
そして年末には何故かアメリカのアケダクト競馬場にいた。
九郎「久しぶりのダートだったが、あっさり勝ったな」
綿兜「日米のダートは別物なので馬場不問ですね」
相変わらず器用なシナイードに陣営は来年のローテーションに頭を悩ませる。
3歳クラシック。
スプリングSでスピルバーグに敗れたものの本番の皐月賞では1番人気に支持されたカロルスフェルト。小島厩舎初のクラシック馬誕生かと騒がれたが――
父ティンバーカントリー、母エアメサイアのソンザペタードがぶっちぎる。
九郎「アイドリームドアドリームの牝系やべえな……」
負けを引きずっても仕方ない。後の二冠は獲ってやると陣営は奮起したが――
ホープフルSや皐月賞では先着したゴールドシップに敗北。
九郎「クソ、俺のハクイン(ハクタイユーインブリード)配合じゃステマ配合には勝てないってのか!?」
綿兜「ストレンジワールド感が出てきましたね」
九郎「お前帰れよ!」
🐴「しろげとあしげを間近で見られて満足」
🚢「お白誰」
🐴「違ゴ聞」
三冠レース全てで複勝圏内に入り古馬や海外の強豪を相手取ったジャパンカップでも4着になったジャスタウェイはファンからは世代の有力馬、他陣営からは油断ならない相手として認知されていく。
一方の牝馬。
2歳女王アンテイアによるソレイユやミネットとの姉妹クラシック制覇を望む声も大きかったが――
3歳になってから台頭してきたディープインパクト第二世代の貴婦人に敗退。
クラシックで勝ち切れない感じが父ライジングサンに似ているとは口の悪いネット住民の声。
そしてサルジュマルジャナ以来の三冠牝馬が誕生するかどうかで盛り上がる秋華賞。
レース前のアンテイアのオッズは単勝3倍で複勝1.1倍。「ジェンティルドンナには勝てないけど2着か3着には入るでしょ。ジェンティルドンナには勝てないけど」というファンの声の現れであり、陣営はブチ切れた。
5馬身突き放しての圧勝劇。
流石にこれだけ差がつけば三冠阻止に対する非難の声も聞かれない。
🚢「ぼばがしゅうかしょうでたたかってる」
この勢いで次走のエリ女も勝利! と行きたかったが――
混合重賞で好走しつつも勝てない日々が続いていた昨年のオークス馬テンマサヴィッジ復活。
ウッ…
この年は夏に一つの珍事があった。
三冠馬オルフェーヴル、鳴尾記念に電撃参戦。
宝塚記念前の一叩きであったが、それにしても前代未聞の出来事である。
(ローテーション的な意味で)こんな三冠馬見たことない!
九郎「まるでオープンを調教代わりに使ってたシンザンみてえだ」
綿兜「九郎さんも秋華賞を菊花賞の前哨戦に使った事ありましたよね」
九郎「ウオッカとダイワスカーレットさえいなければレウコケファラもサルジュアミールみたいに連勝出来たんだが」
ちなみにレース結果は以下の通り。
トゥザグローリー陣営は泣いていい。
同期の三冠馬が奇行に出ている時こそ世代No1の座を奪うチャンスなのだが、レクスソールは長いトンネルの中にいた……
2歳戦。
阪神JFでは母が届かなかった栄冠を娘が掴む。
九郎「くぅぅぅ! これがブラッドスポーツの醍醐味だぜ!」
九郎「最近元気がなかったメジロ牧場の馬が2着か。なんだか嬉しい」
綿兜「父ブレイクタイムはともかくレディーズシークレットから繋がる牝系は流石の良血ですね。グッドルックスのようなあしげなら言う事はなかったのですが」
全日本2歳優駿でもディグニティヌーリが2歳馬とは思えない好タイムで勝利。
しかし体付きなどから生粋のマイラーと予想され陣営はレース選びに苦慮する事になる。
※テューティラリーのデビューは3歳になった。
カンナカムイによる古馬路線。
4歳時には同期のダービー馬が意地を見せたのだから二冠馬のこちらだって負けられない。
カンナカムイ、春古馬三冠制覇。
これにより
祖父オグリキャップ(秋古馬三冠)
父センテレオコロナ(クラシック三冠)
仔カンナカムイ(春古馬三冠)
変則三代三冠達成。
この結果を受け、九郎は日本での格付けは終了したと宣言。
アメリカのBCターフへの参戦を表明する。
凱旋門馬ソーユーシンク
前哨戦でカンナカムイを下したポイントオブエントリー
去年のBCターフでジオポンティと鎬を削ったアクラメーション
他にも強豪が多数集った大レースでカンナカムイは会心の走り。
レイズアネイティヴやエタンを経由しないネイティヴダンサーの直系が勝利した事実にアメリカの競馬ファンはシーラカンスでも見たような表情になった。
が、アメリカはヒムヤー系が滅ぶ滅ぶ詐欺をしている土地でもあるのでやがて「そういう事もあるか」と受け入れられた。
帰国したカンナカムイは引退レースとなる有馬記念に出走。
軽ハンデを生かしたジェンティルドンナにクビ差まで迫られるも凌ぎきり、有終の美を飾る。
兜「ここ数年は安定して30勝して中堅といった所ですね」
九郎「八大競走制覇した中堅とは……親の贔屓目抜きにしても悪くない騎手だと思うが、何故に騎乗依頼が来ないのか」
綿兜「重賞では親の馬に乗るか海外にいる騎手には頼みにくいのでは?」
九郎「……」
カンナカムイ、三代続いての年度代表馬に選出される快挙。
慣例的に地方の成績は考慮しない事になっているダート馬の投票。
フェブラリーSを勝ったスマートファルコンがドバイ5着以降調子を落とし更に腱鞘炎で引退してしまった為、チャンピオンズC1勝のみのワンダーアキュートが選出され一部で議論を呼んだ。
当初の予定通りカンナカムイは今年限りで引退。
ファンは早くも「次代はアメリカ三冠が見たいな」「いや欧州だって」等と夢を語った。
また今年は競走馬としても繫殖牝馬としても卓越した実績を残したユーフォルビアも引退。
一部では既にユーフォルビア系と呼ばれる血統からはまた新たなスターが生まれていく事だろう。
更に今年はミッドナイトサンとイントラムロスが種牡馬を引退。
競走成績と種牡馬成績が比例しないという好例だったミッドナイトサン。
一方活躍馬が牝馬に偏るフィリーサイアーだったので父系の危機に陥っているイントラムロスの存在は馬産の難しさを物語る。
更に更に騎手の中からも長年陣営を支えてくれた田面木博公騎手が引退。
若い頃に九郎が騎乗馬を世話して活躍するきっかけになったとはいえ、40代後半になってからも海外での急なテン乗りなどにも快く応じてくれる心強い存在であった。
九郎「ディープインパクトは早くもサンデーサイレンスの後継に収まりそうだな」
綿兜「ストレンジワールドも一応活躍馬は出しているんですが」
今年の入厩は二頭。
ロバストランポート晩年の傑作になり得る素質を秘めたハイヤーペイトロン。
近親にアピロデュナミスやクロスマークがいるサーチングカラリン牝系のクラウンアルビオン。
九郎「お前に預託する馬はアルビオンで最後になるかもしれない」
綿兜「大事に預かりますよ。……それはそうと母のカンムリクロウは自画自賛ですか? 自分はクラシック馬を多数所持しているぞ、という……」
九郎「違うよ!? クラブ馬の名前は会員からの公募だってお前も知ってるだろ!? いや、この名前をOKした有馬さんには色々言いたい事をもあるけどさ!」
競走成績
・カンナカムイ
金鯱賞 1着
大阪杯 1着
天皇賞(春) 1着
宝塚記念 1着
デルマーマイル 1着
ソードダンサーS 1着
ジョーハーシュターフCS 2着
BCターフ 1着
有馬記念 1着
・レクスソール
アメリカJCC 1着
ジェベルハッタ 2着
ドバイシーマクラシック 6着
安田記念 3着
ヨークS 5着
サセックスS 4着
毎日王冠 2着
天皇賞(秋) 5着
ジャパンC 9着
・シナイード
バージナハール 1着
ドバイターフ 1着
エドヴィユ賞 1着
タタソールズゴールドC 1着
ミンストレルS 1着
KGVI & QES 2着
ヴェルメイユ賞 2着
凱旋門賞 4着
フォールズシティH 3着
シガーマイルH 1着
・カロルスフェルト
きさらぎ賞 1着
スプリングS 2着
皐月賞 3着
日本ダービー 2着
ベルモントダービー 3着
サラトガダービー 2着
フォースターデーヴH 8着
菊花賞 2着
有馬記念 7着
・アンテイア
クイーンC 2着
桜花賞 2着
オークス 2着
名誉の殿堂S 1着
デルマーオークス 1着
紫苑S 1着
秋華賞 1着
エリザベス女王杯 2着
スワニーリヴァーS 2着
アメリカンオークス 1着
・ディグニティヌーリ
新馬戦 1着
なでしこ賞 1着
兵庫ジュニアグランプリ 1着
全日本2歳優駿 1着
スノウスケープ
新馬戦 1着
赤松賞 1着
阪神JF 1着